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磁気分離
細胞分離は強力なテクニックであり、基礎研究や臨床研究の応用分野に不可欠なツールです。生体細胞集団は不均一であるため、多くの場合、個々の細胞種を分離してより深く調査する必要があります。従来より、細胞分離は、細胞の物理的特性(接着性、サイズ、密度、静電気に対する親和性、磁力など)に基づいて行われています。表面抗原発現などの生化学的特性も細胞分離に利用されます。
What is magnetic cell separation and how is it achieved?
この細胞分離法は、磁気ビーズでタグ付けした抗体で細胞表面マーカーを標識する技術と、標識粒子を遠くから移動させることができる磁場の能力を利用したものです1。この磁力制御による移動(磁気泳動)は、不均一な細胞集団を分離するのに極めて有効であり、磁気活性化セルソーティング(MACS)の土台となっています。細胞は、チューブを用いる方法か、カラムを用いる方法のいずれかにより分離できます2。
チューブを用いる磁気分離法では、磁気標識した細胞浮遊液をマグネットの上に置き、標識細胞が移動できる状態にすることで、これらの細胞を分離することができます。
カラムを用いる磁気分離法では、磁気標識した細胞浮遊液をマグネット内のカラムで分離し、標識細胞を捕獲することで、これらの細胞を分離することができます。
Positive selection versus negative selection of cells
何を保持あるいは分離するによって、以下の2種類の選択が可能です。
- 正の細胞選択
- 負の細胞選択
正の細胞選択とは?正の細胞選択が重要である理由
正の選択では、標的集団として収集する必要のある細胞を選択します。この方法では、磁性粒子と、その表面に共有結合した検討対象の亜集団を標的とする抗体を用います。マグネット内に入れられた標的細胞は、磁性粒子に向かって移動し、磁場内に残留しますが、非標識細胞は取り除かれて処分されます。標的細胞は、磁場から除去された後に収集して、意図した用途に使用することができます。
正の細胞選択は、特定細胞の純度・回収率・生存率の点で優れた結果をもたらします。しかし、選択される細胞種や粒子により標的とされる表面抗原によっては、正の選択の結果、細胞が活性化したり、機能的に変化したりするおそれがあります。活性化に至る可能性は低いものの、刺激を受けていない精製細胞を特に必要とする場合には、この磁性粒子誘発活性化が問題となる可能性があります。そのような場合には、負の選択による細胞分離を検討する必要があります。
負の細胞選択とは?負の細胞選択が重要である理由
負の選択は、必要でない細胞を磁気的に分離しつつ、下流の用途(セルソーティングなど)の前に標的細胞集団を吸引・収集することができます。
純度レベルが高く、抗体や粒子が表面に結合していない細胞集団が必要な研究用途には、枯渇や負の選択による濃縮を用います。
この手法では、まず、不要な細胞が発現している抗原に対するモノクローナル抗体を含有するカクテル抗体で、すべての不要な細胞を標識します。非結合抗体を洗い流した後、ステップ2の試薬を使用してこれらの細胞を磁気標識します。標識細胞は磁気の方向に移動し、浮遊液中には純粋な手付かずの細胞亜集団が残るため、この亜集団を収集することができます。負の選択では、大量(95%超)の不要細胞集団を除去することができます1。
下流のシングルセルマルチオミクス解析には、負の選択を用いた濃縮が推奨されます。そのような事前濃縮は、細胞の操作を最小限に抑えるのに役立ちます。
Pre-enrichment prior to sorting
ソーティング前の細胞濃縮は、特に極めて希少な細胞集団のソーティング結果をより迅速かつ確実に得るうえで非常に有益です。この手法ではまず、検討対象の細胞を負の選択により濃縮します。その過程で不要細胞の20~80%を取り除くことができるため、手付かずの検討対象の細胞集団を濃縮し、より迅速かつ効率的にセルソーティングを行うことができます。
What are the main considerations for utilizing magnetic cell separation?
細胞分離の結果を左右するのは、以下に挙げる3つの因子です。
細胞分離の結果を左右するのは、以下に挙げる3つの因子です。
- 標的細胞の純度
- 標的細胞の回収率
- 細胞の生存率
標的細胞の純度
不均一集団中の非標的細胞に対する、収集された標的細胞の割合によって、収集された標的細胞分画の純度が決まります。
標的細胞の回収率
元の細胞浮遊液中の標的細胞の合計数に対する、ソーティング後に得られた標的細胞の割合によって、回収率が決まります。
細胞の生存率
生存率とは、分離後の細胞の質を示唆する生存細胞の割合です。
References
- Plouffe BD, Murthy SK, Lewis LH. Fundamentals and application of magnetic particles in cell isolation and enrichment: a review. Rep Prog Phys. 2015;78(1):016601. doi: 10.1088/0034-4885/78/1/016601
- Tomlinson MJ, Tomlinson S, Yang XB, et al. Cell separation: Terminology and practical considerations. J of Tissue Eng. 2013;4:2041731412472690. doi: 10.1177/2041731412472690
BD Biosciences magnetic separation product portfolio
BD Biosciencesは、磁気細胞分離用のさまざまな試薬と強力なマグネットを取り揃えています。
当社の製品ラインには、 magnetic separation reagents for positive and negative selection of cells. が含まれます。Bリンパ球、CD4・CD8 Tリンパ球、NK細胞、そして特定の種類のマウス樹状細胞を濃縮するための試薬をご用意しています。
BD Biosciences magnetic separation workflow protocol
ステップ | 正の選択(+) | 負の選択(–) |
---|---|---|
1 | BD IMag™粒子標識細胞浮遊液をBD IMag™マグネットの上に置きます。 | BD IMag™粒子標識細胞浮遊液をBD IMag™マグネットの上に置きます。 |
2 | ポジティブフラクションを含有するチューブを取り除きます。。 | ネガティブフラクションを含有する上清を取り除き、適切に標識されたチューブに入れます。 |
3 | ポジティブフラクションを再懸濁し、再度、BD IMag™マグネットの上に置きます。 | ポジティブフラクションを再懸濁し、再度、BD IMag™マグネットの上に置きます。 |
4 | ポジティブフラクションを含有するチューブを取り除きます。。 | ネガティブフラクションを取り除き、ステップ2のネガティブフラクションと共にプールします。 |
5 | ポジティブフラクションを再懸濁し、再度、BD IMag™マグネットの上に置きます。 | ネガティブフラクションを取り除き、ステップ2とステップ4のネガティブフラクションと共にプールします。 |
6 | 取出正向组分,重新悬浮细胞以备使用。 | 取出负向组分,并与步骤2及步骤4中获得的负向组分混合。 |
7 | 共にプールしたネガティブ フラクションをBD IMag™マグネットの上に置きます。 | 共にプールしたネガティブフラクションをBD IMag™マグネットの上に置きます。 |
8 | 残ったポジティブフラクションを取り除き、廃棄します。 | 残った2回濃縮後のフラクションを取り除き、適切に標識したチューブに入れて使用します。 |
「+」と「–」はそれぞれ正と負の選択プロセスを示します。
Sample data generated using the BD Biosciences magnetic separation reagents
正の選択または負の選択後の活性化マーカーCD25およびCD69の発現
CD4 T細胞の正の選択または負の選択(濃縮)後の活性化マーカーCD25およびCD69の発現。正の選択にはBD IMag™マウスCD4粒子–DM、負の選択にはBD IMag™マウスCD4 Tリンパ球濃縮セット–DMを使用。
本濃縮プロトコルの柔軟性を示すデータ
この基本的な濃縮プロトコルがいかにさまざまな実験ニーズに合わせて操作することができるか、またいかに正の選択を濃縮と組み合わせて珍しい細胞亜集団を分離することができるかを例示。
本製品は研究用です。診断や治療には使用できません。
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