Skip to main content Skip to navigation
Banner Image

ウェスタンブロッティングの原理と実験方法

ウェスタンブロッティング法(イムノブロット法)は、タンパク質の検出、特性評価、および定量に用いられている技術です。実験手順は、最初にポリアクリルアミドゲル電気泳動により試料中のタンパク質を分離し、次に分離されたタンパク質をニトロセルロースまたはPVDFメンブランに転写(ブロット)して固定します。検出には単純な抗原抗体反応を利用しており、抗体試薬を用います。まず、目的タンパク質を特異的に認識する1次抗体を反応させ、その後、標識2次抗体を1次抗体に結合させて抗原との複合体を検出します。目的タンパク質は、メンブラン上でバンドとして可視化されます。

 

ウェスタンブロッティングの応用

ウェスタンブロッティング法を使用することで、タンパク質の有無、豊富さ、リン酸化状態、および局在など、目的タンパク質を様々な側面から特徴付けることができます。さらに、これらの定性的解析に加え、バンド強度をコントロールと比較することにより、相対的定量も可能です。

ウェスタンブロッティング用の抗体試薬

ウェスタンブロッティング法では、"目的の抗原" をイムノプロービングするために、モノクローナル抗体やポリクローナル抗体が用いられています。モノクローナル抗体は、1種類のB細胞から産生される1種類の抗体です。一方、ポリクローナル抗体は、複数種類のB細胞から産生される複数種類の抗体混合物で、抗体種ごとに異なる特定抗原を認識します。これら2種類の抗体にはそれぞれに利点と欠点があります。モノクローナル抗体は特異性に優れており、ポリクローナル抗体に比べ明確で信頼できる結果を再現性良く得ることができます。しかし、モノクローナル抗体は高価なため、抗原賦活処理や検出手技など、実験プロトコールの変更に応じて抗体を替えることは容易ではありません。ポリクローナル抗体は特異性の点でモノクローナル抗体より劣りますが、幅広い抗原エピトープを 認識するので、タンパク質 の定性的情報を得られる可 能性が高まります 

performance1

ウェスタンブロッティング用の1次抗体、2次抗体、およびコントロール試薬

1次抗体は、通常、特定のタンパク質やエピトープを特定するために使用され、検出するために蛍光色素や酵素あるいはタグで標識されています。目的タンパク質は、標識1次抗体により直接的に(直接ウェスタンブロッティング法)、あるいは2次抗体を用いて間接的に(間接ウェスタンブロッティング法)検出されます。検出法により、2次検出において酵素や蛍光色素コンジュゲート抗体が用いられます。西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)は、最も一般的なタグ酵素です。

蛍光色素コンジュゲート抗体による検出は、特定波長の光を吸収して異なる波長の光を放出する、という蛍光色素の特性を利用しています。フィルターの組合せを変えることで、目的とする波長の光を測定することができます。全光スペクトルの波長域内に吸収極大波長と発光極大波長を有する蛍光色素が複数存在しており、異なる波長の蛍光色素コンジュゲート抗体を併用することにより、複数種類のタンパク質を1回の実験で識別し検出することが可能です。生物学的に重要な多くのタンパク質を認識する標識抗体が市販されています。

 

2次抗体を使用することで、シグナルの検出や増強が容易になります。2次抗体試薬には、通常、1次抗体が由来する同じ動物種のIgG画分に結合するものが使用されます。このため、実験に使用する1次抗体の選択において、試料の動物種と1次抗体の動物種が重複しないよう注意する必要があります(例えば、マウス組織試料にマウス由来の1次抗体を使用した場合、組織に内在するマウスIgGへの2次抗体の非特異的結合が生じ得るため、マウス由来1次抗体は避ける必要がある)。

performance1

蛍光発光検出と化学発光検出

蛍光発光や化学発光のシグナル検出法は、通常、実験で使用する1次抗体を目的抗原と反応させ、結合した複合体として目的抗原を検出するために使用されます。

 

蛍光標識2次抗体を用いた検出では、蛍光コンジュゲート2次抗体を1次抗体に結合させ、デジタル画像解析装置により蛍光シグナルを検出し解析します。

 

化学発光による検出では、HRPコンジュゲート2次抗体を1次抗体に結合させ、オートラジオグラフィーまたはデジタル画像解析装置により化学発光シグナルを検出し解析します。

 

抗体標識用の一般的な蛍光色素

  • Phycoerythrin(PE)
  • Peridinin chlorophyll protein(PerCP)
  • Fluorescein isothiocyanate(FITC)
  • Allophycocyanin(APC)
performance1

ウェスタンブロッティング法とELISA法の違い

酵素結合免疫吸着測定(ELISA)法は、タンパク質解析に用いられるもう一つの一般的な方法です。ELISA法によるタンパク質の検出は、ウェスタンブロッティング法と同じ抗原抗体反応を基盤としており、1種類の抗体を用いる方法(直接ELISA法)と、2種類の抗体、すなわち1次抗体と2次抗体を用いる方法(間接ELISA法)があります。また、検出法も比色法と酵素反応による発色法があります。

 

ウェスタンブロッティング法と異なり、ELISA法では特異的抗体をウェル内に固定したプレートを使用します。

 

目的タンパク質の検出における特異性は、ウェスタンブロッティング法の方がELISA法より大幅に優れています。ELISA法では、一定時間内に1種類のタンパク質しか検出できませんが、ウェスタンブロッティング法の場合は、様々な発光スペクトルの蛍光色素コンジュゲート抗体を使用することにより、複数のタンパク質を同時に検出することができます。

BDバイオサイエンスのウェスタンブロッティング用抗体試薬と関連試薬、および実験プロトコール

BDバイオサイエンスでは、数千種類におよぶ精製モノクローナル抗体や蛍光色素標識の2次抗体試薬を揃えており、いずれも品質検査により、ウェスタンブロッティング用試薬としての有用性が検証されています。複数種類のHRPコンジュゲート抗体やコントロール試薬のセルライセートもご利用頂けます。

 

さらに、検証済みのウェスタンブロッティング実験プロトコールも作成しています。また、ウェスタンブロッティングに関する主なFAQに対する回答も公開していますので、参考にして下さい。

performance1

For Research Use Only. Not for use in diagnostic or therapeutic procedures.