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臨床研究では、免疫系のモニタリングにより、治療前や治療中の健康状態と疾患の応答や変化を評価します。 この免疫系モニタリングは、いくつかの免疫学研究分野(腫瘍免疫学、アレルギー、自己免疫など)を支えており、HIVやCOVID-19などの病原性感染症に対する反応のモニタリングも免疫系モニタリングの一環です。免疫療法に対する反応を媒介する抗腫瘍免疫に関する認識が高まるにつれて、免疫応答を効率良くモニタリングする必要性が徐々に増しています。BD Biosciencesは、積極的な免疫モニタリングに関する臨床研究のためのツールをいくつか取り揃えています。
免疫モニタリングの応用分野
移植研究における免疫寛容モニタリング
免疫モニタリングは、治験段階にある移植治療薬に対して免疫寛容を引き起こす免疫機構の解明を目指した臨床研究において多く用いられています。例えば、肝移植の臨床試験では、自然発生的な移植後免疫寛容(spontaneous operational tolerance[SOT])などの受動的免疫寛容を、末梢血において、制御性T細胞、ガンマ・デルタT細胞、NK細胞のいずれかのマーカーを用いてモニタリングすることができます。腎移植の臨床試験では、移行期B細胞やIL10陽性グランザイムB陽性制御性B細胞を用いて受動的免疫寛容をモニタリングすることができます1。
Immuno-oncologyと免疫療法の評価
免疫療法の研究では、免疫モニタリングにより、免疫応答の反応性を細胞集団レベルおよびシングルセルレベルで評価することができます。すべての主要な免疫療法(CAR T細胞療法、移植、免疫チェックポイント阻害薬など)にとって、手技の状態を把握したり、分子署名を明らかにして層別化の方法を考案したりするうえで、免疫モニタリングツールは介入前・介入中・介入後のいずれにおいても役立ちます2,3。
プレシジョン・メディシンに関する臨床試験のための免疫モニタリング
また免疫モニタリングツールは、プレシジョン・メディシンの取組みを支援するうえで、生物製剤・バイオシミラーの臨床試験前に必要な、長期安全性や患者一人一人の治療法について検討するための臨床研究にも用いられます4。TH2エンドタイプの喘息においては、ペリオスチンや好酸球増加などの免疫バイオマーカーのモニタリングが、TH2応答のさまざま要素を利用した治療に役立ちます。アレルギーの試験で用いられる免疫モニタリングは、疾患の発症を抑えたり、アレルゲンに対する患者ごとの用量漸増スケジュールについてさらに検討するための理論上の閾値を特定したりするのに役立ちます。
allergy研究における免疫モニタリング
アレルギー反応には、抗原提示細胞(例:樹状細胞)、マスト細胞、IgEを産生するB細胞およびT細胞など、さまざまな免疫細胞集団が関与しています。アレルギー性過敏症は、関与する免疫細胞種(例:IgG、IgM、抗原特異的T細胞)や放出されるサイトカイン(例:IL-4、IL5)に応じてさまざまな種類のものが存在します。アレルギー反応にはIgGを介さないものもあります。免疫モニタリング研究におけるアレルギー反応の測定法には、血清サイトカイン、補体活性化、ミトコンドリア機能の測定があります5,6。
autoimmunity研究における免疫モニタリング
免疫系が自己と非自己を区別できず、宿主を抗原から守る応答が引き起こされてしまうと、自己免疫疾患が起こります。自己免疫疾患の発症におけるB細胞の役割に関する理解が深まったことで、自己免疫疾患に取り組む方法の1つとしてB細胞ターゲティングが登場しました。メモリーB細胞とエフェクターB細胞を標的にすることで、病原性抗体の産生を防ぎ、その後のサイトカインの合成を遮断できる可能性があるのです。B細胞は自己免疫研究に用いられることが増えてきています。7
免疫モニタリングにおける課題
保存サンプルか新鮮なサンプルか
免疫細胞マーカーの免疫モニタリングは、検討対象のサンプルやその調製によっては困難を伴う場合があります。例えば凍結保存は、表面タンパク質の構造を変化させ、免疫染色による検出を困難にさせてしまう可能性があるため、一部の実験は、生存状態をより正確に反映している新鮮なサンプルで行うことを優先させます10。また、サンプル調製法も、サンプルの収率やその後の実験の質に影響を及ぼす可能性があります。BD Biosciencesは、検体を採取・処理・分離するためのさまざまなソリューションを提供しています。BD Horizon™ Dri Tumor and Tissue Dissociation Reagent(TTDR)は、優れたエピトープ保存効果により、腫瘍や組織を緩やかかつ効果的に解離します。TTDRは、細胞死を最小限に抑えながら細胞収率を最大限に高めますので、さまざまな腫瘍種を効果的に解離することができ、シングルセル研究が可能になります。
検討対象マーカーの状態
腫瘍免疫学のトランスレーショナルリサーチでは、ペアサンプルの評価により、治療によって引き起こされる免疫応答の検討、初期診断時の静的マーカーの評価、治療期間を通しての動的マーカーの評価などの際に、比較が可能となります。どのような免疫モニタリングツールでもこれらのマーカーの正確な状態を評価することはできますが、困難を伴う場合もあります。
材料またはサンプルの存在量
サンプルの存在量と生存性は、実験設計において重要な役割を果たしており、実験の範囲を限定する場合があります。マルチカラーフローサイトメトリーは、複数マーカーの同時解析を可能にし、サンプルのポテンシャルを最大限に引き出します。貴重なサンプルを効果的に用いるには、パネルを適切に設計することが大いに役立ちます。BD Biosciencesは、そのプロセスを簡易化するpanel design tools and resourcesをいくつか取り揃えています。
免疫モニタリング研究のためのツール
フローサイトメトリー
通常、細胞サブセットの多様性のモニタリングには細胞表面マーカーが用いられます11,12,13。
免疫組織化学法
Immunohistochemistry(IHC)は、免疫染色法の1つで、特異抗体の能力を利用して組織サンプル中の目的抗原を検出します。免疫組織化学法は、いくつかの研究分野や、さまざまな病態に関する臨床研究で日常的に使用されています。免疫組織化学法は、顕微鏡法との併用で、固定された生物検体や生きた生物検体中の染色免疫細胞の可視化を可能にします。
シングルセルマルチオミクス
シングルセルマルチオミクスにより、免疫学、腫瘍学、代謝などのさまざまな分野で、綿密な解析を行うことができます。BD Biosciencesは、BD Rhapsody™ Single-Cell Analysis SystemやBD® AbSeq Assaysなどのシングルセルマルチオミクスツールを取り揃えています。これらのツールは、RNA・タンパク質バイオマーカーの発現と、FlowJo™ v10 SoftwareやSeqGeq™ v1.6 Softwareなどの強力なバイオインフォマティクスツールを組み合わせたもので、マルチオミクスデータを取得したり、これらのデータから有用な情報を得たりするのに役立ちます。
免疫モニタリング研究のためのアッセイ
BDは、免疫細胞を、各種の技術を用いて、さまざまな観点から調べるための試薬やキットから成る包括的な製品ラインを取り揃えています。免疫モニタリングのために用いられる手法のなかでも特に優れているのは、マルチカラーフローサイトメトリーです。それは、非常に複雑な部分集団の特徴を、機能的にも表現型の点からも明らかにすることができるからです。ELISA、ELISPOT、BD® Cytometric Bead Arrayなどの補足的な技術との併用で、マルチカラーフローサイトメトリーからは得られない情報(分泌される分子の量など)を得ることができます。
BD Horizon™ Dri TBNK + CD20 Multicolor Panelは免疫モニタリング研究のために最適化されています。このチューブは、研究や臨床試験(免疫応答のモニタリングから抗CD20抗体によるB細胞除去に至るまで)で使用されてきました。本パネルはT細胞、B細胞、NK細胞の特性を明らかにします。ドライフォーマットは、手動ピペッティングを排除することで効率性を高め、BD Trucount™チューブとの併用で絶対数を割り出します。
7色BD Horizon™ Treg Panelは細胞療法の研究や免疫系の研究のために最適化されています。チューブには分注済みのドライマルチカラーカクテル抗体が入っており、このカクテル抗体は、FoxP3陽性ナイーブ・移行期・エフェクターTregサブセットの特性評価に用いられているマーカーで構成されています。研究や臨床試験における本パネルの応用領域としては、自己免疫試験、移植試験、腫瘍微小環境試験、感染などが挙げられます。
References
- Sani KB, Sawitzki B. Immune monitoring as prerequisite for transplantation tolerance trials. Clin Exp Immunol. 2017;189(2):158-170. doi:10.1111/cei.12988
- Hartmann FJ, Babdor J, Gherardini PF, et al. Comprehensive immune monitoring of clinical trials to advance human immunotherapy. Cell Rep. 2019;28(3):819-831.e4. doi:10.1016/j.celrep.2019.06.049
- Przespolewski A, Szeles A, Wang ES. Advances in immunotherapy for acute myeloid leukemia. Future Oncol. 2018;14(10):963-978. doi: 10.2217/fon-2017-0459
- Seyhan A, Carini C. Are innovation and new technologies in precision medicine paving a new era in patients centric care? J Transl Med. 2019;17(1):114. doi: 10.1186/s12967-019-1864-9
- Yu W, Freeland DMH, Nadeau KC. Food allergy: immune mechanisms, diagnosis and immunotherapy. Nat Rev Immunol. 2016;16(12):751-765. doi:10.1038/nri.2016.111
- Simon D, Cianferoni A, Spergel JM, et al. Eosinophilic esophagitis is characterized by a non-IgE-mediated food hypersensitivity. Allergy. 2016;71(5):611-620. doi:10.1111/all.12846
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- Arneth B. Tumor microenvironment. Medicina (Kaunas). 2019;56(1):15. doi: 10.3390/medicina56010015
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本製品は研究用です。診断や治療には使用できません。
BD Biosciencesのフローサイトメトリー関連製品(機器、ソフトウェア、試薬など)は、ヒトの疾患に関連するマーカーの検出に用いられる薬事未承認の検査に欠かせない要素です。これらの製品は、あらゆる疾患の診断用としてFDAの審査や承認を受けているわけではありません。分析物特異的試薬。分析特性および性能特性は確立されていません。
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